2021/05/04

一座建立

大文字山の麓に佇む「石の庭」   

冨長敦也作 はじまりの石  

亭主がある客のために茶会を開いたとしましょう。客のことを思い軸、花、道具そして料理をキューレートしても、客がその亭主の意図を汲むことができなければ、退屈で凡庸な場になります。一方、客が亭主が企画した一期一会の場を特別なことと受け取り名残を惜しむ空気感が生まれた時、その特別な場を「一座建立」と呼びます。

一座建立には別の意味もあります。複数のメンバーで何か新しいものを生み出すとき、それぞれが担当分野が違っても目標にブレることなく阿吽の呼吸で最終着地したとき、この価値あるプロジェクトに関わることができたことを全員で喜び満足感に浸ることも「一座建立」。

先日、最初のゲストとして、このプロジェクトに関わっていただいたクリエーターの方々をIDOCHAにお招きしました。彫刻家の冨永敦也さんは建築家と作庭家とコラボレーションするのは初めてでしたが「一座建立」のコンセプトに共感していただき創作を引き受けてくれました。

建築の水谷光宏さん、作庭の山下雅弘さんとすり合わせの機会を重ね、ある時、石をこよなく愛する冨永さんに見てもらいたいと、京都洛北、大文字山の麓に佇む「石の庭」を一緒に見学したこともありました。その様なコミュニケーションと共通の体験が創作の糧となり現場での試行錯誤を経て据えられた彫刻は、「一座建立」を体現するIDOのアイデンティティーになりました。