私は、1988年、ニューヨークの近代美術館において開催されたAnselm Kiefer展でこの画家のことを知りました。
作家は4メートルを超える作品を多数創作しキャンバスに絵の具というありきたりなメディアでの表現にとどまらず、金属や木片、藁、といったおよそ絵画には使われたことがない物体を駆使し3次元的に制作します。
それら質量のある物体を立体的にコラージュした作品群を展示した部屋に一歩入った時の印象は強烈でした。画集で見た印象と実物のそれは全く別物で、画集が小さな水風呂としたら、実物はフィンランドの大自然にある湖に飛び込むようなもの。
この圧倒的な展覧会を体験し、現代美術は写真ではなく実物を見なければ知ったことにならないと痛感しました。