これは、ヨゼフ・ボイスの言葉です。形のない美しいものを、相手にうまく伝えられた時、それは芸術になります。
芸術は画家や音楽家だけのものではなく、教師であれ調理師であれ感動を伝えることができれば、その行為は芸術です。教師が授業で知識を授けるに留まらず生徒の行動を変える気づきを与えることができたら、それは紛れもなく芸術活動。なぜ、感動が必要なのか?それは感動がなければ、人々の考え方や価値観が変わらないからです。
人に感動を与えるという意味で、最近、観た素晴らしい芸術を一つ挙げるなら、それは兵庫県立美術館で開催された「コシノ・ヒロコ展」です。
この展覧会を観た人は、コシノさんの多彩な作品を再発見し人間コシノ・ヒロコを身近に感じたに違いありません。
もちろんコシノさんの凄さもさることながら、この展覧会のコンセプト、空間のデザインからポスターまでトータルにデザインを担当した三木健さんによる演出が秀逸でした。
モネによる睡蓮を描いた大作は、本物の睡蓮の庭を体験するよりも何倍も強烈な印象を与えます。三木さんによる展覧会もまたコシノさんを素材に数々の驚きの連続。斬新な演出のオペラを観終わった時のような余韻に浸って美術館を後にしました。彼の仕事は極め付きの芸術活動に他なりません。